大判例

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大阪高等裁判所 昭和27年(ネ)1072号 判決

控訴代理人は、「原判決を取消す、控訴人に対する被控訴人の本訴は、これを却下する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、右理由がないときは、「原判決を取消す。被控訴人の請求は、これを棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求める旨申立て、被控訴代理人において陳述したものとみなすべき控訴状によると、被控訴人は「本件控訴を棄却する。」との判決を求めるというにある。

当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において、先づ本案前の主張として、被控訴人は、当初被告を豊商事株式会社とし、その代表者の資格証明を徴して、訴を提起し、右訴状が同被告に送達せられ、被告より答弁書の提出があつた後、被控訴人は被告を控訴人たる株式会社豊商事に訂正する旨の申立をしたが、旧被告と新被告とは全く人格を異にする法人であつて、かような当事者の変更を来す訂正は許されないものであるにかゝわらず、これを許容し新被告に対してなされた原判決は、訴訟手続に違背するものというべきであるから、原判決を取消し、本訴却下の判決を求める次第であると述べ、ついで本案につき、被控訴人の主張事実中、被控訴人及び控訴人が、いずれも被控訴人主張の営業を目的とする会社であること、ならびに控訴人が被控訴人に対し、染色加工を依頼したことは認めるが、その加工料、支払期等の契約内容に関する被控訴人の主張事実は、全部これを否認する。かりに、控訴人に、被控訴人に対し支払うべき加工料の債務があるとしても、被控訴人の染色加工不良のため、控訴人の販売先たる神戸市生田区三宮町一丁目五三番地株式会社マルゼン商店等より返品される等の事故を生じ、そのため控訴人において、値引或は弁償金の負担等による損失を余儀なくされ、合計金百五十四万五千三百六十円七十五銭の損害を蒙つたから、本訴において、右損害賠償債権を自動債権として、本件加工料債権と対当額で相殺する。と陳述した外、原判決事実摘示と同一であるから、こゝにこれを引用する。

三、理  由

先づ、控訴人の本案前の主張について判断する。

本件は、被控訴人において、当初豊商事株式会社を被告として訴を提起し、右訴状が被告に送達せられ、同被告より答弁書と題する書面が提出されるに及んで、訴状訂正願と題する書面を提出し、被告を控訴人たる株式会社豊商事に訂正する外、被告の住所、代表者の表示をも、これに照応する如く訂正したものであること記録上明瞭であるところ、右新旧両被告は、相互に何の関係もなく、しかも共に実在する別異の人格者であるから、とくに当初の訴状に新被告を相手方とする趣旨が判然と認められない以上、右訂正によつて当事者の変更を来すは明らかであり、かくの如きは訴訟法上許されないものというべきである。

しかしながら、本件においては、被控訴人は、右の訴状訂正願に、被告の氏名、その住所、法定代理人の表示を新被告のそれによる外、従前と同一内容の別個の訴状を添付し、該訴状が、口頭弁論期日呼出状とともに控訴人に送達せられ、これに対し、控訴人より期日延期願が提出されただけで特段の異議がなく、控訴人欠席のまま第二回口頭弁論期日における弁論を経て、控訴人敗訴の原判決がなされた経過になつていること記録上明らかであり、しかも右は、新旧両被告に対する訴としては、その併合の主観的、客観的両要件を具備していること明白であるから、被控訴人よりなされた右訂正願とこれに添付した新被告に対する訴状の提出は、その形式上の瑕疵にかゝわらず、これによつて、訴の追加的併合をなし、両被告に対する共同訴訟を発生せしめると同時に、旧被告に対する前訴を取下げ、こゝに、いわゆる任意的当事者変更を来したものとみるを相当とし、これに対し当事者より異議なく、しかも新訴を適法として、既に本案の終局判決がなされた以上、もはや右に存する手続上の瑕疵に基き新訴の違法を主張し得ないものと解するのが、訴訟経済と実際の便宜にかない、妥当な解釈であるというべきである。しかのみならず、本件の当事者の誤りは、双方の商号が、極めて類似しているため、訴訟委任を受けた代理人において、これを取り違えたことに由来する間の消息は、記録上容易に推認し得るところであるから、右のような解釈によつて、控訴人に対する本訴を適法と認めても、あながち放縦な起訴を許す結果を招くものとは言えない。以上の次第であるから、右と見解を異にし、本訴を不適法とする控訴人の所論は、採用し難い。

ついで、本案について按ずるに、被控訴人主張の如き内容の染色加工契約は、控訴人の否認するところであるにかゝわらず、被控訴人より何等その立証がないから、右事実を原因とする被控訴人の本訴請求は、これを失当として棄却するの外はなく、右と反対に出でた原判決は、取消を免れない。

よつて、民事訴訟法第三百八十六条、第九十六条及び第八十九条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 吉村正道 大田外一 金田宇佐夫)

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